ジャクリーヌ・メスマケール
Il court, il court, le furet (1:1)
2022
マット紙にデジタルピグメントプリント
137.6 × 88.3 cm
限定15部、作家によるサイン・ナンバリング入り作品証明書付き、アーティストプルーフ2部
額装なし
関連エディション: Il court, il court, le furet (ジグソーパズル)
ジャクリーヌ・メスマケールの今回の作品「Il court, il court, le furet」は、彼女の主要なインスピレーションの源の一つである、50年以上も暮らし、制作活動をしてきた自身のアパートから着想を得ている。ブリュッセルにある、アールデコ様式の建物の6階に位置するこのアパートは、彼女にとってまさに小宇宙である。家であると同時にアトリエであり、作品や素材の保存庫であり、図書館や「驚異の部屋」などでもあるこのアパートは、メスマケールの日々のアート制作を行う場所であるばかりでなく、作品の制作対象物でもあったり、作品の素材であったりもするのである。この場所は、骨董品や風変わりなオブジェ、光の陰影やごく小さな出来事などとともにメスマケールの写真やフィルム作品に多く登場する。壁や床のひび割れた箇所にピンクの綿布を詰めることで、日常的な空間をドローイングのためのキャンバスに変換させた独創的な作品である「Les Introductions roses」(1995年)を見てもわかる通り、建築や家具は彼女の作品に欠かすことのできない要素なのである。
今回のKeijibanの二つのエディション作品となった写真は、小さな多目的な部屋で撮られた。これは、メスマケールが、以前の居住者たちが貼ったり塗ったりしてきた塗料や壁紙などを全て除去した際に発見した、元々の壁紙の残った部分である。まるで考古学者のように丁寧にこれを「発掘」した彼女は、このビルが1929年に完成した際、この部屋が子供部屋として作られたことを発見した。そして時間を遡るこの経験が、彼女自身の子供時代をも甦らせることになったのである。1970年代に壁紙をデザインし、そして「不思議の国のアリス」の熱心な読者でもあったメスマケールにとって、まるで古代のフレスコ画のような「風景」を発見したことは喜びであった。
タイトルの「Il court, il court, le furet」(かけるよフェレット)は18世紀のフランスの有名な子守唄の歌い出しの部分である。この歌は、フェレットが森の中を駆け回っている様子を、捉え所のないものや思いつきなどが現れては消える様に見立てており、ユーモラスでありながら少し物憂い、彼女の時間旅行と、このジグソーパズルを完成したいと願う人を待つ時間とに見事に呼応している。
ジャクリーヌ・メスマケールの展示は2022年4月15日から5月14日の期間、Keijibanにて行われました。