カティンカ・ボック
Amnésie
2022
2枚で1セットのデジタルピグメントプリント(マット紙)
46 x 88.5 cm、18 x 11.5 cm
小さいプリントは写真の全体像、大判プリントは「掲示板」サイズの写真の3分の1のフォーマット。二枚の写真の組み合わせはランダム。
フレームなし
限定30部、作家によるサイン・ナンバリング入り作品証明書付き。アーティストプルーフ3部、版元プルーフ3部
「Amnésie」はカティンカ・ボックが、屋外で、夏の時期に展示されるという特殊な展示環境を持つKeijibanのために選んだ写真である。この作品は、ロバのピンと立った耳からも分かるように、周囲に気を配り、何かを聞き取ろうとする、自然界では極めて重要な感覚を呼び覚ます。しかも、重要なのは、それがほとんど彫刻的なまでの有様で訴えかけてくるという点である。
左右非対称の画面構成と、ほとんどのイメージが緑の奥深いグラデーションに溶けていくようなフォーカスによって、「聴く」という行為の根源的なあり方、それは空間の中を動かずに探索していくことなのだ、ということが捉えられている。事実、距離についての注意深い考察や、鋭敏な縄張り意識は動物だけの特質ではなく、カティンカ・ボックのようなアーティストの彫刻作品表現においても重要な課題でもある。そして、Keijibanの掲示板サイズのポスターを、日本の伝統的な掛軸を意識しつつ縦に3等分に分割することで、音の空間化がより強調されている。
一方で自律的な作品でありながら「Amnésie」は、同タイトルの、彼女の近年の彫刻作品とも関連づけられる。腕と耳が無く、帯状の皮に包まれた彫刻作品、自身が乗る馬の皮でできた鎧をつけた騎士のような彫像である。このような自由で微かな繋がりを見出すことこそが、かけ離れた二つのメディアを行き来しながら豊かな創造性を結実させるカティンカ・ボックの持ち味である。
カティンカ・ボックの展示は2022年6月15日から7月31日の期間、Keijibanにて行われます。