イト・バラダ
Scuff Marks fig. 1, Tangier
2022
イタリア産の大理石に写真転写
30.5 x 30.5 x 1 cm
限定10部、作家によるサイン・ナンバリング入り作品証明書付き。アーティストプルーフ2部、版元プルーフ2部
このエディションのタイトルと主題は、モロッコ、タンジェの旧市街にてイト・バラダが見つけた「跡」のシリーズを参照している。バラダは、人々が建物の陰で片足を壁に付けて寄りかかって時間を過ごし、そこから立ち去る際に靴を壁に擦り付けることで残る跡を記録した。公共のスペースで上記のように立っていることで残される足跡は縦に伸びたものになる。「Scuff Marks fig. 1」(2021)はバラダがタンジェで行った長期的な写真調査の一部である。映画や写真を通じて、彼女は傷、瓦礫、破片、割れ目、打ち捨てられた場所、象徴的なビルやモニュメント同様に街のアイデンティティを示すすべてのものに着目した。跡を刻む、ということがまさに写真を思わせ、その「記録的」な性質が、バラダが彼女なりの方法で踏襲してきたドキュメンタリーの伝統において重要になる。しかしこの絵が純粋にリアリズムとして、染みなどのごくありきたりのものにフォーカスする「地面視点」のストリート写真として捉えられるとしても、これは明らかに抽象的言語への言及であり、得も言われぬ美しさを持っている。
最後に、このタンジェの壁の断片は、このような(靴を壁に擦り付ける)慣習のない金沢のごく普通の道にあるKeijibanでオリジナル作品として発表された。バラダは社会的、文化的な事象に間接的かつ詩的な方法で向き合い、転換させ、抽象と表象を行き来する。大理石タイルのエディションにおいてはそれがさらに明らかである。擦り跡は国を移動しただけでなく、イメージのメディアと表層もまた転換されているのである。
イト・バラダの展示は2022年12月15日 から2023年1月31日の期間、Keijibanにて行われます。